88.air-nifty.com > 8/24~27 タッシーの遍路日記

8月24日から27日まで一緒に歩いた、 遍路番長ことタッシーの遍路日記です。

8月24日(火)
もう午前1時だというのに準備が終わらない…。
4:40の始発に乗る為、目覚ましは3時にセットしてある。
6:55羽田発の飛行機に乗る為には始発に乗らないと間に合わないのだ。

結局準備が終わったのは午前2時過ぎ。
1時間寝るか?でももし起きられなかったらどうする?
しかし眠気には勝てず、1時間眠ることにする。
1時間後、ジリリリリ!!のベルと共に目覚める。ふう、良かった起きられた。
洗面や食事を済ませ、4:25に家を出る。

しかしリュックが重い。本当にこんな重いものを背負って歩けるのか?
お遍路の解説書には5kgが限度と書いてあったが、
昨日の夜の時点で既に8kgあった。
その後は計っていないがおそらく10kgくらいだろう。
海十さんは21kgを背負って山道を歩いたという…人間技じゃない!!

電車とモノレールを使い羽田空港へ。
早朝だというのに駅には結構人がいる。おそらく朝まで飲んでた口だろう。
チェックインを済ませたものの、もし寝過ごしたらと思うと居眠りも出来ない。
出発のバスに乗るまで必死に眠気をこらえる。
やがて離陸。
徳島空港近くになると海や山が見える。窓から見える徳島の海は最高に美しい。
そして8:05、ついに徳島到着!!やった~ついに四国初上陸!!

待合所に降りると凰宮さん(光永君の母親)からメールが届く。
さすがにタイミングはばっちりである。
空港内の喫茶店でモーニングセットを慌しく食べ、
9時前にタクシーに乗りJR徳島駅へ向かう。
運転手さんも気さくな感じで、四国の人柄がうかがえる。
しばらく料金メーターも立てずに走ってたし。

タクシーの中では光永君とメールや電話で連絡を取り合う。
徳島駅から電車を乗り継ぎ11時半頃、光永君も一泊した甲浦バス停に着く。
少し時間もあったので、売店のおばちゃんにバス停のことやお遍路のことを尋ねる。
こういう会話もなかなか楽しい。バスが着くと「バスが来たよ~」と教えてくれた。
客は私と旅行者風のおにいさんと女子高生の3人だけ。
女子高生は化粧もせず素朴である。

光永君は佐喜浜という所にいるようだ。
30分くらい走った所で地図とにらめっこしながら降りるバス停を探す。
でもよくわからない。
どうやらいつのまにか通り過ぎてしまったようだ。
信号待ちを見計らい、地図を片手に運転手さんに話し掛ける。
「この辺に行きたいんですけど…」
「な~んだそれなら後ろだよ。わかんなかったら人に聞きな。教えてくれるから。」
外見はやくざっぽいがとても親切な運ちゃんだった。
さすが四国の人は親切だな~怖がらずに早く聞けばよかった。

結局次のバス停で降り、ひょこひょこ歩きながら光永君に電話する。
光永君「なんか目標物ないですかあ?」
私「ないなあ…。なんか見つかったらまた電話するわ。」
こんなんで大丈夫なんかいな…。しょっぱなからピンチや!

前方には何にもなさそうなので、
今来た道を戻り地図に載っていそうな目標物を探す。
「お!あった“喫茶ラッキー”」「なんやらガソリンスタンドもあるで!」
何度か電話しながら歩きつづけること20分。
ついにコンビニ前で光永君発見!!やった~!我、合流ニ成功セリ!
お遍路さんの始まり始まり!!

光永君が使わない荷物を送り返すというのでまず近所の郵便局に向かい、
今後のことを話しながらしばし涼む。
お昼は近所の有名な“みかど食堂”で光永君はラーメン、私はたまごうどんを頂く。
お遍路さんにはなじみのお店のようで、ノートにはたくさんの人の書き込みがある。
恥ずかしながら私も一言書かせて頂きました。

今日は三津漁港のバス停まで歩き、そこに泊まるという。
いきなり野宿だ。さすがお遍路さんは甘くない。
近くのお店で夕飯と朝飯を買い込み、いよいよお遍路スタート!

歩き始めて30分もしない内に、おばちゃん達から声がかかる。
おお~これがお接待というやつか。
いくばくかのお金を頂き(もちろん光永君のみ)、納札をお礼に渡す。
「今日はどこまで行くん?」
「年はいくつ?」
「この前、管(直人)さんもここ通ったで。」
話が弾む。
光永君はおばちゃんおじちゃんを自慢の一眼レフのデジカメで撮っている。
おばちゃんの笑顔がいい。
僕は時折あいづちをはさみながら、その様子をただ眺めていた。

海沿いを歩く。
いや~海だ!!海はええなあ~。思わず叫ぶ。
なんか空気もきれいだし、雲は多いが時折、陽が差し込む。
雲や山もきれいだなあ~。
天気が心配だったけど、なんとかいけそうだ。
結局、その後の3日間もすごくいい天気だった。
神様、ありがとう。

しばらく行くと夫婦岩が見えてきた。遠くから見ても凄いのがわかる。
ずんずん歩き、夫婦岩に到着!ここの東屋でしばし休憩。
巨大な岩だ。素直に凄いと思う。注連縄(しめなわ)がかかっており、
荘厳な雰囲気だ。
海の雄大さにしばし見とれる。波が岩場ではじけ飛ぶのがすごい。
断崖まで行き下を見るが怖くてすぐに目をそらす。
久しぶりに自然の凄さと神秘さを感じた。

休憩している内に雲行きが少し怪しくなってきた。
地図を確認。
三津漁港のバス停まで行かないと雨をしのげないという。そそくさと出発。

辺りが薄暗くなってきた頃、一台の車が止まった。
小さな子供を座席に残し、お母さんが出てきた。
「これ、少し固くなっちゃったんですけど…」
と、紅白のお餅を我々二人に手渡してくれた。
私にとっては初めてのお接待である。
ありがたいごとである。
丁重に礼を言う。

夫婦岩からひたすら歩き続ける事約2時間、5時半頃にバス停に到着。
いや~やれやれやっと着いた…。
リュックをおろす。こんな重いもん担いでよく歩いたもんだと思う。
(しかし光永君のリュックはこんなものじゃないのだ…)

先ほど頂いたお餅を食べる。
私は味がないな…と思ったが、光永君はこう言った。
「素材の味がする。美味しいですよ。」
ハッ!とする。
俺はなんて失礼な奴なんだ、なんて馬鹿な奴なんだと思った。
お餅をくれたお母さん、ごめんなさい。
何度も何度も噛み、お餅の味を噛み締めた。
今思い返しても涙が出そうになる。

初日に歩いた時間は4時間くらいかな。
ちょっと腿が痛いけど、この調子なら何とか行けそうだ。
濡れティッシュで身体を拭き、ジェルで脚をマッサージする。
あっという間にあたりは暗くなってきたが、
海の近くだけに夕日がこれまた美しい。

隣の家はトラック運転手さんの休憩所のようだ。
我々の前を通り過ぎようとしたこれまたちょっとコワモテのお兄さんが、
「おい、シャワー使っていいぞ!」と声をかけてくれる。
ホンマですか?やたっ!今日は風呂なしと思っていただけに感謝感激である。
しかし初対面の我々が使わせていただくのはさすがに気が引ける。
丁重に挨拶とお辞儀をして使わせていただく。

「ここの社長さんはよそ者に使わせるといい顔しないから黙っとけよ。」
と言いながらも貸してくれた運転手さん、ありがとう。
お遍路が日常の四国でも、それはもっともな話である。
光永君は一緒にたまった洗濯物を洗っていた。

少し離れた所には外に水道のある事務所があった。
普通の感覚では勝手に使わせてもらうのは悪い気がするものだが、
野宿のお遍路さんはそんなことも言っていられない。
ありがたく歯磨きや洗顔に使わせて頂く。

すっかり夜になり、バス停の中は明かりがないので、
光永君はヘッドライトをつけて作業。
僕も持参のライトをつけながら荷物を整理する。

ベンチは小さく一人しか寝られない。
ジャンケンで勝った方がベンチ、負けた方が地面に寝ましょう、
という光永君の提案でジャンケンをする。
結果が怖くて横を向いたままジャンケンをしてしまう。
「あ、俺の負けですね。」という光永君の言葉を素直に信じてしまった。
今思えば光永君が譲ってくれたのだと思う。申し訳ない。
光永君を虫が這う地面に寝かせることになってしまった。反省…。


8月25日(水)
いつのまにか目が覚める。早く寝たせいか自然と便意がある。
普段の生活ではなかなかこうはいかない。
やはり人間は自然のリズムで生きるのがいいのだと思う。

しかし隣の休憩所にトイレを貸してくれとは言い出せず、
少し離れたガソリンスタンドまで走る。
すいませんと声をかけるが誰もいない?でも物音が?
困ったな~。

結局、昨日声をかけてくれたコワモテ運転手さんにお願いして
トイレをお借りする。お世話になりっぱなしだ。
久しぶりの汲み取り式。まだまだこちらでは多いようだ。
運転手さんたちに納札を渡し、丁重にお礼を言って出発する。

光永君の話だと、1時間半も歩けば24番最御崎寺(ほつみさきじ)に着くと言う。
よっしゃあ、四国に来てはじめてのお寺だ。がんばろう。
海沿いの国道をひたすら歩く。
陽射しは強いが、涼しい風も吹くので清清しい。
山の緑や空の青さが美しい。
海も相変わらず綺麗だ。

途中、小さな蛇さんと出会う。
アスファルトの上でじっとしている。
こんな所にいると轢かれちゃうぞと諭すが当然聞く由もない。
体の模様も綺麗で、首に鮮やかな緑色の線が入っている。
なかなかお洒落な蛇さんだ。
「バイバイ。お洒落な蛇さん!」と自然に声が出た。
蛇をこんなにかわいいと思ったのは初めてだなあ。

さらに歩くと室戸岬と彫られた石柱を発見。
おお!ついに来ました室戸岬!
後ろにはこれまた大きな岩がそびえ立つ。
なにやら一部は顔のように見える。スフィンクスのような…!?
室戸岬に今いるんだと思うだけで感慨深いものがある。
空も海も太陽も雲も空気も景色も山もみな美しい。

(この途中にやたら綺麗な公衆トイレがあった。なんでこんな所に?
でもありがたい。)

そして弘法大師が悟りを開いたという御蔵洞(みくろど)に着く。
神秘的で大きな洞窟である。
少し休憩し、中の神社(?)にお参りする。
厳かな空気で、中はとても涼しい。
大きなカニがたくさんいる。カニの死骸もたくさん転がっている。
なぜかこのカニ達がここの洞窟を守っているような気がした。
隣にある祠の中の写真を撮ろうとしたが、
「撮ってはならぬ。」
という声が聞こえた気がして中止する。
何か大きなものに諌められたようだ。

さらに歩くとついに来ました24番最御崎寺への遍路道入口!
途中までアスファルトの車道もあるが、
しばらく上りの山道、石段が続く。
よっしゃあ!やっとお遍路らしくなってきたどー。

せっせと登るが、結構急なのできつい。途中で杖が欲しくなる。
すると絶妙なタイミングでちょうどいい枝が落ちていた。
適度な弾力もあり、よーしこれで百人力じゃ!
そしてせっせと登ること30分ほど。
ついに最御崎寺の門前の階段に辿り着く。
するとその瞬間、今まで使っていた枝がポキンと折れてしまった!
役目を終えたということだろう。
これもまた不思議な出来事だった。

最御崎寺についてリュックをおろし、光永君に参拝の手順を教わる。
まずは本堂に行って札を納め、鐘を強弱の2回鳴らす。般若心経を唱える。
続いてご本尊様の真言を3回唱え、最後に南無大師遍照金剛を3回唱える。
つづいて大師堂に行って同じ事を繰り返す。
両方のお参りが終わったら納経所へ行き納経をしてもらう。…以上。

しかし今は来たばかりでお遍路の道具は何も持っていない。
まずは道具を揃えなければ。
売店に急ぎ、白衣,金剛杖,数珠,納経帳,納札,経本,杖カバー,杖袋を買う。
白衣に袖を通し、数珠を左手にはめる。おー遍路っぽくなったぜい。
納札に日付・住所・名前を書き込み、
納経所でご本尊様のお名前を伺い、いざ出陣!
札を納め、ちょっとはずかしいが声を出して経を読む。
ちゃんと上まで声が届いただろうか…。

お参りを終えて戻ると、光永君と小鉄君の会話が盛り上がっていた。
小鉄君は写真学校の学生で、
サラリーマンを4年やっていたが写真を諦めきれずに学校へ入ったという。
光永君も写真を勉強中であるから、2人の会話は否が応でも盛り上がる。

小鉄君は町歩き程度のスニーカーしか履いておらず、常にカメラを手に持っている。
その状態で1番から杖も使わず殆どを歩きで回り、
11番の遍路ころがしさえも踏破して現在に至ると言うのだから、
ある意味すごい青年である。
しばし歓談の後、また次に会ったら一緒に回りましょうと約束して別れる。

最御崎寺からふもとまでは
室戸スカイラインという車道の端を歩くことになるのだが、
これがまた素晴らしい眺めなのだ。とにかく海が美しい。
車で走っちゃもったいないよ、皆の衆!
車も殆ど通らないので、悠然と歩く。
ん~気持ちいい。

光永君によると金剛杖の一番上に梵字が書いてあるのは、
途中で行き倒れになってもそのままお墓(卒塔婆)として
使えるようにとの配慮だそうだ。
それを隠す為に普段はカバーをして使うのだという。合理的だ。
杖を突くとカバーについた鈴がチリンと鳴る。
そうすると疲れていても気が入る。(少なくとも私は)
鳴らす度に気が入る。昔の人はうまく考えたものだと思う。

ふもとには抜群にうまいカレーライスを食べさせてくれる(秋元海十氏 談)
お店“食堂はまゆう”があるという。
光永君が一年前に来たときは売り切れで悔しい思いをしたそうな。
今日は絶対あそこのカレーライスを食べるんだ!と朝から息巻いている。
しかしもうお昼近いぞ、間に合うのか? 急げ!!
“はまゆう”発見! 突撃ぃー!!

まずは冷たい麦茶をいただく。ぷはぁ~うまい。
結局2人で1ポットを空にしてしまった。すいません。

そしていよいよカレーライスを注文!!やった、間に合った!!
しかも今日はランチがエビフライ定食だから、エビフライカレーが普段よりも安い!
「おばちゃん、エビフライカレーとカツカレーね!」
エビフライとカツを半分こして一気に食う。うん、うまい!!
しかし食べ終えてから写真を撮ってない事に気付き、
「おばちゃん、カレーライス追加!」
またもや撮る前に手をつけそうになるが思いとどまって撮影。
今度は1皿を半分こして一気に食う。ごちそうさまでした!

エネルギーを充電した所で、いざ出発。
今度は平地が続くから楽かな~と思いきや、昼時だけに日差しが熱い!
でも天気はいいし、景色はいいし、風も気持ちいいのでずんずん進む。
歩くこと約2時間、25番律照寺(しんしょうじ)に到着。
団体のお遍路さんがやかましい。

この次の26番金剛頂寺まではあと約4キロ。
登りの山道もある。
現在時刻3時半。
納経は午後5時まで。急がないといけない。
せっせと歩く我々の横を、団体お遍路さんの帰りのバスが通り抜けてゆく。
やっぱお遍路は自分の足で歩かにゃいかんぜよと思う。

なんとかふもとにつくが、ここからは上りの山道だ。がんばろう!
最後の石段を登り切った。時刻は4時半頃。
間に合った!

ここには大きな弘法大師の石像があった。
やけにでかくて貫禄がある。
鐘も大きくて鳴らしがいがある。
大きいことはいいことだ!?

ここでまた小鉄ちゃんと遭遇し、
これからは一緒に歩こうということになる。
26番からの山道を下りた所で鯨料理のお店“鯨の郷”(いさのさと)を発見!
その近くで休憩する。
あたりは薄暗いのだが、暮れかかった空と海とのコントラストが美しい。
セミプロの小鉄っちゃんに夕暮れをバックに光永君を撮ってもらう。
ブログに載ったのはそのうちの1枚である。

僕と光永君はそこのお店で、
鯨の刺身定食、鯨フライ定食を満喫。
1500円くらいなのだが、
お遍路さんにとっては凄い贅沢な気もする。
大きな窓からは薄暗い空と海が見える。

そのお店の駐車場には
真っ黒に日焼けしたベテランお遍路さんが休んでおり、
しばし3人で話を聞く。
出発の頃には真っ暗になっていた。

夜道は怖い。街灯は所々にしかないし、
波の音は聞こえるし、すぐ近くを車は通るし。
暗いというだけで気力も落ちる。
しかし真昼の炎天下を考えれば、
夜の涼しいときに距離を稼ぐのも手だという意見も。

海十さんは山道をヘッドライトだけで歩いたという。
信じられない話だ。
私なら怖くて体がすくんでしまうだろう。

1時間半ほど歩いただろうか。
暗い中、やっと休憩所に着く。
ここは広いし綺麗なトイレもあるので野宿には便利だ。
でも8時近い。お店は開いているかな?
さすがに飯抜きはつらい。

僕がお留守番ということで2人が買出しに。
運良くお店は開いていたそうで、
鯖か鯵のお寿司とマカロニサラダをゲット。
両方とも超ウマ!である。

光永君は中学生らしくスナックをポリポリやっている。
しかし毎日の日記付けや写真の整理は疲れた身体には大変だろう…。
今日もヘッドライトをつけながら遅くまで作業していた。
頭が下がります。


8月26日(木)
朝、またもや何度もお遍路をしているというおじさんに出会う。
リュックはなんと自家製で、ポリバケツを加工したものなのだ!
俺にはちょっと出来ないなあ…。恥ずかしいもん。
しかし遍路を続けている人達はみな力強い。芯の太さを感じる。
人間的にはユニークな人ばかりだが…。

今朝は割とのんびりして8時頃に出発する。
しばらくして海沿いを離れ住宅地の中を歩いていると、
とある家の中からおじいさんの声がする。
中に入りなさいとのお言葉にすだれを上げて入ってみたらびっくり。
中には立派な祭壇のようなものがあり、
柱やなげしにはたくさんお札が貼ってある。

おじいさんから旅費のお接待を頂き、奥様に麦茶を入れて頂く。
奥様は小柄で人柄の良さそうな、なんともかわいらしいおばあちゃんである。

しばしの説法の後に取り出したるは金糸の表紙の経本。
やたらと分厚く大きい。
良く聞き取れなかったのだが、
なにやら弘法大師ゆかりの品で大層な代物らしい。

「おぬし等はなかなか良い人たちである。」
「これからそなた達を祓って進ぜよう。」
おそらくこのような事をおっしゃっていたのだと思う。
般若心経を唱え、
「南無大師遍照金剛! エイ!!」
の掛け声と共に、順番に我々の肩を叩いて行く。

有難いことである。
今回の旅の安全と成功を確信する。
現在は脚がお悪いとの事であったが、昔はお遍路をなさっていたようだ。
こちらのご夫婦にどうか幸あれと祈ります。
神様、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

海沿いに戻り、やや賑やかな町に出た辺りで、
またもや寄っていきなさいとお接待の声がかかった。
途中で出会った地元のお遍路さんを含めて4人もいるのに、である。
麦茶のお接待をいただく。冷たく冷えていて実にうまい。

これだけでも十分ありがたいのに、なんとおにぎりのお接待である!
炊き立て御飯で作ったまだ熱いおにぎり。
中の昆布がまた絶妙にうまい!
さらに梅酒に漬けてあった梅だろうか、梅干のお接待である。
た、たまりません!
これでもかという攻撃。いいのかこんな贅沢をして!
神様、どうかバチを与えないで下さい!と叫びたくなる程の衝撃だ。

やはり日本人はごはんです!
インドから帰ったときも、
ゆかりさん(東京書籍の方の奥様)のおにぎりが最高にうまかった!
日本人万歳!!
納札を手渡し、深々とお辞儀をし、
「とてもおいしかったです。ありがとうございました!!」
最高の気分での出発である。

海沿いの弘法大師の御霊跡を拝み、
しばらく炎天下の中を進む。
小鉄はよく「アチー!」と叫ぶ。

地元の遍路さんに途中で“アイスクリン”をおごってもらう。
暑いときにはやはりこれでしょう。
店員のお兄さんも「暑いときはこれに限る!!」と凄い力の入れようである。
きっと子供の頃から食べ続けてるんだろうなあ。
アイスクリームではない。高知名産(?)の品である。
シャーベットのようなアイスで、ほのかにバナナの味と香り。
ミルク味のようでミルクでないベンベンという独特の味わいである。

さらに歩くとお接待所が現れた。
と言ってもタダのお接待所じゃない。
テーブルに椅子、寝転がれるスペース、扇風機に冷たい麦茶、
トイレにシャワー、ガスコンロに食器棚、
ちょっとした旅館並みだ。
まだ完成していないそうだが、完成したら凄いことになりそうだ。
道路向かいの豪邸に住んでいる奥さんがオーナーらしく、
挨拶をしにいらっしゃった。なんとも頭が下がる。
しかしこれだけの設備となると管理にかなりのお金がかかるだろうし、
何より悪用する輩が出ないか心配になる。
どうか神様、このお接待所をお守りくださいと祈るばかりだ。

地元のお遍路さんは今日中に27番を打ちたいとの事で先に出発。
彼もまた夏休みを利用して区切り打ちをしているのだった。
住まいは室戸岬の辺だそうだ。
なんとも素晴らしい所にお住まいである。

光永君は朝から手羽先手羽先と言っていた。
うまい手羽先があるというのだ。
今、そこに辿り着こうとしている。
お?見えた!“ヨシダの手羽先”とある。
ごく普通の大きめなコンビニという感じの店なのだが、
奥に調理場があって、お惣菜を作っているようだ。
夕食を買い込みながら、早速注文!!

1000円で15個ほどだろうか。
出来たてアツアツでいい香りがする。
新聞紙で包まれて出て来た。
よーし、どんだけうまいか味見してやろうじゃないの。
たかが手羽先だろうと思っていたのだが、
これはうまい!!ちょっと塩気が多いのだが
疲れた身体には丁度いい。

○ン○ッキーどころじゃないぞ。
こりゃあビールが欲しいなあ。でも今はお遍路の途中だから我慢しよう。
…と思っていたら小鉄の奴、ちゃっかり買ってきやがった。
でも俺は飲まないもん。
よーし、この手羽先とビールの為にまた必ず来るぞ!!と誓う。
幸せを満喫した所でいざ出発!

今日はもう少し頑張れば27番神峰寺(こうのみねじ)のふもと辺りまで行けるのだが、
明日の登りはきついので今日はゆっくり休んで、
明日朝早く出ようということになった。
(実は光永君の膝がかなり悪かったのだが、そんなそぶりは見せなかったので
 気が付かなかったのだ。光永君、ごめん。)
しばらく歩くと二十三士温泉を発見!!
よっしゃあ、温泉じゃ、温泉じゃ!!

…の前に近くのコインランドリーでお洗濯。
なんせ真夏のお遍路さんだけに猛烈に汗をかく。
いかに洗濯を済ませるかもお遍路さんの重要な課題なのだ。
3人分仲良くパンツも一緒に放り込む。

今だから話せるが、合流したときの光永君は少々臭かった。
白衣をしばらく洗えなかった為、すっぱい匂いを放っていたのだ。
しかしこれは無理もない。
自分もジムで大量に汗をかいた後などはかなり来ることがある。
自分で自分が臭いというのはなんとも情けない気分になるものだ。
最近では銀入りの制汗剤をせっせとスプレーしている。

洗濯物が乾くまでしばらく時間があったので、
各自の雑用を済ます。
光永君は写真の整理と日記をつける。
私は明日の帰りの電車・飛行機を時刻表をにらみながら調べる。
小鉄っちゃんは…?!

温泉は露天もあり、なんとも気持ちがいい。
脚を入念にマッサージする。
しかし光永君の脚の長いこと!!
後で聞いた話では、Gパンを買って裾上げをしたことがないという。
なんともうらやましい話じゃないか!
健脚な上にコンパスが長いんじゃ、太刀打ちできない訳だ…。
温泉から出たら、もちコーヒー牛乳!定番である。

温泉の休憩所ではテレビを見ながらのんびりする。
でもなにやら台風が近づいているというではないか。
なんとかそれてくれと願う。
(結局この3日後に直撃が来た。)

ここで改めて今まで撮りためた写真を見せてもらう。
なかなか凄い写真が多い。
これなら写真展を開いても十分いけそうだ。(素人判断だが…)
ここはコンセントがあるので、パソコンや携帯に充電が出来る。
毎日ブログを更新する光永君にとって、どこで充電するかもまた重要な問題である。

ここの温泉に宿泊予定のおじさま達と歓談する。
「15歳でまわっとるんか。えらいのお。」
みたいな事をみなさんおっしゃる。そりゃあそうだろう。
この後ラジオやテレビに出た日にゃどうなってしまうのだろう。

おじさまの中に一人、かなりの遊び人というか豪快なおじさまがいた。
淡路島で農業をやっているそうだが、
自宅にカラオケルームとビリヤード場を作ってしまったという。
大笑いのコンテストでも優勝してテレビに映ったとか、
カメラも30年ぐらいやっているとかでかなり詳しい。
とにかく人生楽しもうというおじさまで、
その風貌は布袋様か大黒様かというような感じだった。
淡路にきたら遊びに来たらええと携帯の電話番号まで教えてもらった。
今もどこかで豪快に笑っていることだろう。

このままここの温泉の畳の上で寝られれば最高なのだがそうもいかず、
荷物をまとめて近くの公園の東屋へ。
よーし、明日は頑張って登るぞ!と気持ちを新たにして就寝。
一日くらいはどこかに泊まるかと思ったが、
結局3日間とも野宿であった。これもまたよし。


8月27日(金)
今日は27番神峰寺を目指す為5時起きの6時出発の予定である。
興奮していたのか、夜中に2度も目が覚めてしまう。
普段の生活で夜中に起きることはまずないのだが。
しかも朝目覚めたときは、
なぜか横のテーブルの上が濡れており、鳥の羽が一枚落ちていた。
こりゃあ、夜中に鳥に襲われたか??

山から昇る朝日は見事なほどに美しい。
自然の中で朝日を見たのは何年ぶりだろう…。
とてもすがすがしい気分になる。
そしていざ27番に向けて出発!

タッシーの観察日記にも書かれていたが、
朝はなぜか脚が軽く、ズンズン進める。気分がいいからだろうか。
確かに疲れてくると抜かれて一番後ろから追いかけるのだが…。

海沿いの道は実に気持ちがいい。
海は綺麗だし、空も雲も太陽も輝いて見える。
陽射しを浴びて歩くことの素晴らしさを満喫していた。
山道の方へ向かっても緑は綺麗だし、とにかくいい気分だ。
脚は少々痛いけど。

27番まで後3キロ(但し上りの山道だが)付近の道端で休憩。
いよいよ今日の大一番だ。そして今回の打ち終りでもある。
しばらくはアスファルトの道なのだが、結構急なので楽ではない。
自分のペースで、ということで2人より少し先を行く。

つらくなると、“南無大師遍照金剛”を唱えながら杖を突く。
途中で何回か「えい!」と気合を入れる。
これが同行二人ということなのだろうか。
唱えると元気が出る。
お遍路さんや働く人に会えば「こんにちは!」だ。
最初は挨拶に戸惑ったが、さすがに3日もいれば抵抗はない。
汗は玉のように流れ落ちるが、首にかけた手拭で拭き拭き進む。

途中、若い女性のお遍路さんに出会う。
女性のお遍路さんは初めてだ。
自転車を押しながら登っている。
話をしてみたかったが、「こんにちは!」と声をかけただけで先を急ぐ。
今思うと失敗だったか。俺らしいといえば俺らしいが…。

後に山頂付近で聞いた話だが、
上りは確かにきついが、下りを自転車で降りるのはかなり爽快だそうな。
確かにそれは言える!
自転車で回るというのも確かに一つの方法だな。
ただ観光気分でバスで回るというのはどうもいただけない。
要は心構えだと思うのだが。
もっともこんな事が言えるのも、自分がまだまだ健康で歩ける体だからだ。
健康であること、生かされている事に感謝したい。

しばらくすると道の横に遍路道を示す看板が。
このままアスファルトを登っても着くのだろうが、
それじゃあ意味がない。
きつい石段もあり苔で滑りそうな道もあり、
さすがに遍路道は楽じゃないが、嫌だとは思わなかった。
むしろ楽しいと言った方がいいのかも知れない。
一所懸命な自分が嬉しかった。

途中10分ほど休憩するが、
そこからは一気だった。
遍路道のお札に勇気付けられ、
“南無大師遍照金剛”を唱えながらひたすら登る、登る。
登る。登る。登る。…

そしてついに27番・神峰寺の下の休憩所に到着!!
11時頃だったろうか。
一気に行こうかとも思ったが、
やはり3人一緒に到着したいと思い、2人を待つことにする。
10分程すると光永君・小鉄っちゃんの姿が見えた。

ここでも何度もお遍路していそうなおじさんと遭遇。
当然かなり日焼けしており身体も頑丈そうだ。
こういう人たちからは、
オーラというのか力を感じる。
ごく普通の人達なのかも知れないが、
ただならぬ物を発している。

お店の人が荷物置いてっていいよと言ってくれた。
ありがとうございます!!リュックがないと体が軽いこと軽いこと!

本堂、大師堂と回って札を納め、般若心経を読み上げる。
最後に弘法大師様の石像を拝する。
自然と感謝の気持ちが起こる。
「無事に4日間を回ることが出来ましてありがとうございます。
 光永君のこれからの旅をどうぞお守りください。」
と祈る。
何か大きな存在というか霊的なものを感じた気がした。
今回最後の納経を済ます。

う~んしかし、団体さんはマナーを守って欲しいなあ。
観光地じゃないんだから…。ちと騒がしいし…。

ふと我に戻って周りを見ると二人の姿がない。
休憩所まで戻っても荷物があるだけでどこにもいない。
携帯にかけても出ない…。
これは神社へ行ったかな?と思い、
脇の石段を登って神社へ向かう。

寺の賑わいとは裏腹に、なんとさびれている事か。
神社の神様もこれでは寂しかろう。
隣にあるのだから、
寺だけでなく神社にも参って欲しいと思う。
これは何かを象徴しているような気がする。

結局、神社から降りてきた所で2人を発見。
2人で写真を撮っていたのだという。
このように一人になってしまい腹を立てるケースが、
私にはままある。
またやってしまったかと少し反省する。

光永君がうどんを食べるというので僕も便乗。
大正解だった。抜群にうまい!
うどんは讃岐のようにこしがあるし、だしもいい!
その上、人参、かぼちゃ、ねぎ、ゴーヤなど煮込んだ野菜が
たくさん載っているのだ。
景色もいいし、山の上でこんな御馳走にありつけるとは!!

下り始めてしばらくすると、
上りでは気が付かなかった東屋を見つける。
光永君によると初心者は登ることに夢中になり、
回りが目に入らないのだそうだ。
確かにその通り。いかにも俺らしい…。

下りは遍路道を通らず、アスファルトの車道を降りようという事だったのだが、
途中で会ったお遍路のおじさんの
「ゆっくり歩けばこっちの方が楽だよ。」
という一言で遍路道を下ることに。

下りになると指先に体重がかかって痛い。
親指は血豆状態で踏ん張りが利かない。
どうしても遅くなってしまう。すまん、みんな。
う~ん、上りは何とかなるんだけど、
下りで迷惑かけちゃうんだよなあ…。

とうのはま駅でしばしの休憩を取る。
ここの駅は待合所もトイレも綺麗だ。
でも泊まりはダメと書いてある。
お遍路の中の駅なんだからとも思うが、
やはりあくまで駅ということか。

リュックを降ろしてベンチに座るとなぜかくしゃみが連続して出る。寒気もする。
肌着のTシャツは、ぐっしょりで絞れそうだ。
どうやら体が冷えてしまったらしい。
早めにシャツを着替えないと本当に風邪を引いてしまう。
歩くのに一所懸命で、ここまでになっていることに気が付かなかった。
炎天下でもこういう事になるのか。

次の下山駅で光永君とはお別れだ。
最後のお遍路に入る。
いよいよ歩き納めである。 
あっという間に下山駅入口に着いてしまった。
最後に小鉄っちゃんとの2ショットを光永君に撮ってもらう。

そして小鉄と2人、光永君にエールを送る。
「がんばれよ~」
手を振り振りの別れである。
お互いの方向へ歩き出す…。

最初は岡山へ出て、そこから新幹線で帰ろうと思っていたのだが、
6時間という道のりを考えると二の足を踏んだ。
高知空港から飛行機で帰る事にする。
少々高くつくが、早く帰って休みたかった。明日は仕事だし。
しかし、来た時は徳島までスカイマークエアラインで15300円だったのに、
帰りのANAはなんと28800円!
高すぎるんじゃないか?
パイロットに何千万も払うからだよ。
などと一人で文句をたれる。

なにはともあれ、
4日間の歩き遍路は終了した。
自然と共に過ごした素晴らしき4日間であった。
またいつか歩く時もあるだろう。

光永君を始め、凰宮さん、海十さんにただただ感謝を申し上げる次第です。
また今回のお遍路に関わって下さった全ての方に感謝致します。
そしてお遍路の道を開いて下さった弘法大師様、ありがとうございました。

合掌